時計のコラム
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石崎時計店 第6号
このページでは、各国の時計や本校ウォッチコースの情報を紹介しています。
独立時計師ヴィアネイ・ハルターの時計は妙に面白い
ウォッチメーカーコース学科長  石崎 文夫

オメガで採用されているコーアクシャル脱進機の開発者ジョージ・ダニエルズ、歯車から手作りするフィリップ・デュフォー、いまでは誰もが知っているフランク・ミュラーがメンバーの「独立時計師協会」は、すごい独立時計師たちの集まりです。メンバーは現在23名(他に11名の候補者)で、2000年よりメンバーとなったヴィアネイ・ハルターもその1人です。(写真1)

ヴィアネイ・ハルターは1981年にパリの時計学校を卒業し、アンティークウォッチの修理や時計メーカーのための時計作りをした後、サントコアに工房をかまえ、1994年に独立しました。

サントコアと聞くとなじみのない方も大勢いるかと思いますが、オルゴールのルージュ社の本拠地です。ジュネーブから車でジュラ渓谷を抜け、曲がりくねった山道を登るとサントコアに着きます。更に進むとフルーリエとなり、ル・ロックル、ラ・ショード・フォンへ至ります。ジュラ山脈のふもと、スイスのなかで時計産業のメーカーが多数集まる地域です。

ハルター氏のアトリエは3階建ての建物(写真2)で、ここにヴィアネイ・ハルターの時計に関するすべてが集まっています。アトリエ内には、ところせましと、旋盤等の工作機械が置かれ、仕事途中の時計をいくつも見ることができます。(2003年の研修旅行で、私も実際に訪問しました)
写真1:ヴィアネイ・ハルター氏

写真2:ハルター氏のアトリエ

彼は、1998年に写真3の時計でバーゼル・デビューします。『アンティコア』と呼ばれ、初めて見たとき、なんだか映画に出てきそうなSF的な感じがしました。テーマが「海底2万マイル」の潜水艦ノーチラス号の窓をモチーフにしたと聞き、なるほどとあらためて見入ったことを覚えています。

写真4は高級ジュエラーのハリーウィンストン社とのコラボレーションで制作され、『オーパス3』と名づけられた時計のムーブメントです。オーパス3は、ハリーウィンストン社が独立時計師と組んで発表するシリーズの第3弾で、10枚のディスクによってデジタル表示する機械式時計です。

写真5を見てください。表示されている数字は、上の左右が時間、下の左右が分、真ん中の上下が日付を表します−写真では、14日の20時37分をさしています。

アトリエを訪問した際ハルター氏は、新しく取り組んでいることを次々と説明してくれました。そんなに話して大丈夫かと聞くと、「技術とアイディアには自信があるんだ。だからもし今ここで大メーカーの技術者が見ていても、作り方がまったく違うから大丈夫さ」とのことでした。ユニークな発想、独創的な時計、それに輪をかけて面白いのが写真1でも見て取れる"ハルター氏の表情"でした。

写真3:バーゼル・デビューした
『アンティコア』

写真4:日付、時間、分をデジタル表示するディスク

写真5:オーパス3
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