例えばジュネーブから車で1時間のところにジュラ渓谷の時計製造の拠点ルサンティエという町があるのですが、天気がよければちょっと早く出発し、ジュラ山脈の峠で車を停め、モンブランが中心をなすアルプスの山々の美しさを堪能したあと(写真1)、ジャンシャン(注1)採取なんて事もできます。
(注1)高山に生えるリンドウ科の植物。枯れたものを乾燥させて、パーツの最終磨きで使用する。昔のジュウ渓谷の職人は使用していたが、今では独立時計師フィリップ・デュフォー氏のほか、少数の時計師しか使っていない。 |
今回の研修では、ジュネーブからスイスに入り、ジュラ渓谷、ラショードフォン、ビエンヌと時計産業発達地域を車で横断しチューリッヒから帰国するというコースをとりました。
ジュネーブは空港と市内が世界で最も近い主要空港のひとつと言われており、車で約15分の距離です。初日の到着は夕刻だったため、研修は翌日からとなりました。
初日はジュウ渓谷にある時計メーカー見学です。ここには多くの工場があり、昨年はジャガールクルト、ヴァシュロン・コンスタンタンの工場を訪問しました。
今年度はルブラッシュにあるオーディマ・ピゲ本社工場の見学です。オーディマ・ピゲは1875年創業の複雑時計を得意としたメーカーで、ロイヤルオーク(写真2)が良く知られています。
本社工場に隣接して博物館がありますが(写真3)、この建物は創業時の工房で創業者ジュール・ルイ・オーディマの生家であったとのことです。
ここで面白いものを発見しました。1918年に出されたオーディマ・ピゲ社の就業規則です(写真4)。
月〜金の平日は7:00〜19:00、土曜は6:30〜12:30と仕事時間が書かれています。何とこの当時の就労時間は週当たり58.5時間労働です。今と比べるとかなり働き者ですね。平日は日の出とともに起き日没まで仕事をし、その分土曜の午後から日曜まで続く休日を楽しむ。
そんな感じがこの山の中の町・ルブラッシュの生活だったのでしょう。
ルブラッシュからルサンティエを通り抜け、ルソイアに行くと敬愛するフィリップ・デュフオー氏のアトリエがあります。
今では学生からのリクエストにより毎年のようにアトリエ訪問をするようになっています。目の前でのコート・ド・ジュネーブ(注2)の実演は目を見張るものですが(写真5)、今年はピンセット一本でブレゲヒゲをつくる様子も見せてもらいました(写真6)。
(注2)さざなみをモチーフにした装飾模様の一種で、時計では受けやローターなどに施されることが多い。その美しい模様は高級時計の証とされ、古い歴史を持つ。 |
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