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第105号 パリ・ロダン美術館

ロダンの話が続いているので、パリに行ったついでにロダン美術館にまた寄ってみた(写真1)。

 以前、この館は修道会が所有していて、芸術家たちに貸し出されていた。暮らしていた人々を挙げてみると、ジャン・コクトー、マチス、イサドラ・ダンカン等で、詩人のリルケもいた。

写真1
<写真1>


そのリルケが、ロダンをこの館に招待したのだ。すぐに気に入ってしまったロダンは早速一階を何部屋か借り、最後の晩年、十年間をここで過ごすことになった。
  その後、この建物はパリ市の所有になり、この館をとても気に入っていたロダンは、パリ市に「すべての自分の作品を寄附するので、自分の美術館として欲しい」と申し入れた。これはかなり難しいことだった。そうなると個人作家の国立美術館となるからだ。国立で個人作家の美術館は、日本では考えられないし、アメリカでも国立はワシントンのナショナル・ギャラリーただ一つだけだ。アメリカでは多くの大きな有名な美術館、例えばニューヨークのMOMA(ニューヨーク近代美術館)もプライベート、つまり民間で運営されている。

話をロダンに戻すと、結局多くの支持者の後援もあって、ロダンの亡くなった一年後、国立ロダン美術館となり、多くの作品がここに展示されている。場所はパリ市内のアンヴァリッドの近く、オルセー美術館より歩いて15分位だ。

 建物もさることながら庭がすばらしく、植物とロダンの作品がマッチして、なかなか見応えがある(写真2〜4)。

 写真2は建物の窓から庭を撮ったものだ。ロダンもこうして眺めていたろう。写真3では中央、木の間から「考える人」が見える。写真4は地獄門だ。

 夏休みなどは入るまでに一時間以上並ばなくてはならないが、庭はいつでも自由に入ることができる。また、パリのミュージアムパスを持っていると並ばなくても入れる。このパスはかなり有効で、ルーブルですら並ばずに入れてしまう。そうでないと、夏は一時間以上は並ぶ覚悟が必要だ。

 作品は6600点、デッサンも7000点あるが、ロダンが晩年過ごしたアトリエの雰囲気もあり、そこで作品を見られるうれしさもある。私みたいに彫刻をつくったこともない人間は、人間の黒目は白目と同一平面にあるのに、立体をつくる粘土ではどう表現しているのかな、と思ってそういうところばかり見てしまう(写真5)。作品を見ていると、私たちには全く違和感なく受けとることができ、むしろ古典的とも思えるのだが、当時はあまりに革新的で、保守派に受け入れられなかったと聞くと(そのため美術館設立が遅れたと聞く)ビックリし、いつの時代も同じだなと思わされる。ショップでは作品の模刻の手や頭部がよくつくられていて、販売されている。

その中の一つが写真6だ。これはロダンの名作「カレーの市民」の人物像の一人、ヴィッサンという名の彫像の頭部だけを複製したものだ。高さ約7cm、現在いつも机の上に置いてながめている。こうやると飽きる作品もあるのだが、これは優れたもので4ヶ月経った今も飽きない。


写真2
<写真2>



写真3
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写真4
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写真5
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写真6
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14/11/17

(写真をクリックして拡大してみてください。

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